柔らかさと自分のリズムで専門分野を探究する
大学院人文社会科学研究部 法学部長
大日方信春 教授
私は憲法研究を専門にしています。それは「国の最高法規である日本国憲法自体の正当性の基礎づけ、つまり、憲法より下位の法律や命令を正当化する憲法自体が、何によって正当化されるのか」という疑問、いわば哲学的基礎づけの探究からはじまりました。
ジョン・ロールズの正義論を中心にこの研究を進め、大学教員のポストを得た頃、一つの興味深い新聞記事を目にしました。「ミッキーマウス“延命”」(2003年1月17日読売新聞)の記事です。アメリカで著作権期間を20年間延長する法律に合憲判決が下されたことを伝えるものでした。著作権を保護すること、それは表現の自由を制約することにもなると気付きました。「よいこと」とされていることを疑うという私の憲法に関する探究に通じるものを感じました。
また当時、憲法学の観点からこのテーマを取り上げる研究者はほとんどいませんでした。そこで私は憲法原理論から華麗なる転身(?)をして、「著作権と表現の自由の問題」に関する体系的な研究を進めています。憲法学者でこのようなテーマを論ずる研究者はあまりいないかもしれません(笑)
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大学院時代に、英米の規範的正義論の旗手、ジョン・ロールズの「正義論」について研究。 その成果をまとめた『ロールズの憲法哲学』(有信堂高文社、2001年)など著書も多い。 |
大学で法学の授業を行う際には、まず一旦思考をリセットしてもらうことを大切にしています。例えば、学校で「これは弱者保護の法律であり素晴らしい」と習ったとすれば、それを疑う人は少ないと思います。しかし、「そもそも弱者とは誰なのか」、「本当に弱者保護のための法律になっているのだろうか」と問いを深めることで、他のものがみえてきます。
他には、民主主義や選挙に関して出前講座などで高校生に考えてもらうことも多いです。「そもそも」や「本当にそうだろうか」という視点でぜひ柔らかく考えてほしいと思います。
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手書きで美しくまとめられたノート。学生時代に書いた1996年の研究の成果がまるで今日書かれたかのように大切に保管されている。このノートを基に恩師の著作の補訂を目指している。 |
私にはいくつか続けていることがあります。例えば、毎朝5:00頃に起きて出勤し、SNSのXに出勤報告、午前中のうちに大切な仕事を済ませます。午後は次々と舞い込む仕事を進めながら、スポーツジムで走り、サウナで汗を流します。それから学者になってから「トミカ」を20年以上集め、毎月新車の発売日には購入しています。これら一つひとつに大きな意味や意図はありません。早起きも自分に合っているからだし、走るのはスッキリするから、トミカは昔から働く車が好きだったからです。専門の憲法学とどうつながるのか、私にも上手く説明できません(笑)。でも、研究もコレクションも続けていたら結構充実したものになりました。
自分の研究もしながら法学部長もやっていて、われながら、なかなか多忙ではないかと思っていますが(笑)、自分に合った習慣があるからこそ、しっかり、心地よく研究を深められていると思います。
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