2026年4月から外務省勤務決定
法が守られ、武力解決が許されない社会を!

法学部法学科4年

宮川 愛華(みやがわ あいか)さん

教育・キャリア
所属
インタビュー担当

インタビューの健児くんです。
宮川愛華さんは今年、難関として知られる外務省専門職員の採用試験に見事合格。2026年春から、外務省で働くことが決まっています。法学部で専門に学んだのは国際法。将来は「武力による解決が許されない、守られるべき法が守られる国際社会を築く」ことを目標にしています。

現役国連職員の話を聞いた高校時代から、国際的な仕事に関心

高校時代からこれまでのことについてお話しください。

高校は、普通科の英語コースで学びました。生徒同士で英語のディベートなどを行ううち、英語を使う楽しさというものを感じるようになっていきました。その英語コースで、現役の国連職員の方の話を聞く機会があったんです。その時から、将来は何か国際的な仕事をしたいという漠然した気持ちを抱いていました。

そして、熊本大学法学部に進学し、出会ったのが国際法です。国際法を専門に学びたいと思った大きな理由が、ロシアのウクライナ侵攻。自分が生きてきた中で初めて、リアルタイムで目撃したのがこの戦争でした。最初は「戦争は悪」という漠然とした認識でしたが、国際法の勉強を通し、ロシアの侵攻は明確な国際法違反であり、守るべき規範が守られていないという問題意識を感じ、それを解決する必要があると考えるようになりました。

加えて、2年次に受講したキャリアデザインの講義で、熊本大学OBの外務省職員の方のお話を聞くことがあったんです。その時、外務省は実に多岐にわたる仕事をしていて、外国語はもちろんですが、国際情勢も日々勉強しながら、日本や国際社会の未来を創っていく国の機関であると知りました。そして2年生の終わりごろから、外務省で働きたいと本格的に考えるようになっていきました。

ゼミも、国際法の研究室を選ばれたんですよね。どんな勉強をされたのですか。

ひとつは、国際法模擬裁判。架空の事例ですが、全文が英語で書かれた国際問題にかかわる裁判例をゼミ生で分担し翻訳。読み合いをして国際法の知識を確かめあった後に、最終的に原告側と被告側のどちらを支持するのか、そしてその理由は何かを、国際法をもとに主張するという活動を行っていました。

もうひとつは、個人での研究です。私は、自律型致死兵器と呼ばれる武器を国際法でどのように規制するかについて調べ報告を行いました。自律型致死兵器とはAIを使った兵器の一種。AIが攻撃対象を定め、AIが判断して攻撃するという兵器で、すでにウクライナ侵攻やガザ地区への攻撃で使用されているとも言われています。人間の尊厳や国際人道法の観点からも許されないのではないか、そういった議論もある多くの人が注目する領域。私は、報道や論文、国連などでの議論や総会決議などに目を通し報告を行いました。現在はそれを卒論テーマとして進めています。

難しい英語の面接も、「とにかく黙らないこと」に注力!

今年、外務省の試験を受けて合格されました。どのような試験なのですか。

試験は毎年1回行われています。受験資格は日本国籍を持っていることと、受験時点で21歳以上30歳未満という年齢制限もあります。学歴は不問です。

1次試験では、公務員全般に必要な基礎能力が見られます。外務省特有なのが、必須である国際法に加え、憲法または経済が選択科目としてあり、それが論述試験で行われることです。それから英訳と日本語訳の両方と、その場で示される時事論文について自分の考えを書くという試験内容です。2次試験は日本語面接が2回、外国語面接が1回、集団討論が1回行われます。

実は2次試験で、もうだめだろうなと思っていました。1回目の日本語面接は、外務省勤務2、30年というベテランの職員の方5人に私一人。雰囲気にのまれてしまったうえに想定外の質問ばかりで、練習してきたことを出し切った手ごたえを自分で感じられなかったんです。2回目の日本語面接は、外務省の人事課トップの方も加わった6人の面接官に対し、私一人でした。

印象に残っている質問はありますか。

外務省では、入省後、一人ひとりに研修言語が割り当てられ、それをマスターすることが求められます。面接でその言語を第5希望まで出せるので、私は第1希望を英語、第2希望をフランス語、第3希望をスペイン語にしていました。英語は世界で多くの人が話す言語だし、フランス語は、国際法がフランス語で書かれていることが多いから希望したんです。

一方で、入省の動機にはロシアや中国、北朝鮮にかかわる安全保障について書いていました。そこで、入省の動機と希望言語に関連がなく矛盾しているのでは、と言われてしまい、今思い出しても背筋が凍ります(笑)。

そのうえ、英語の面接もあったんですよね。

英語の面接では、英字新聞の記事を渡され、その内容について質問されました。私に与えられたトピックは日本の出生率低下について。出生率の低下は何が問題かと英語で聞かれ、労働人口減少につながることだと答えると、じゃあどうすればいいかとまた聞かれました。そこでAIへの投資が必要なのではないかと答えると、AIにもできない仕事はあると。そうやって、私の返答の矛盾点や、私の意見をさらに深掘りした質問をされる、というような面接でした。

もうとにかく黙らないようにだけはしようと、出てくる限りの単語を駆使して乗り切った感じです。文法とか語彙とか間違いも多かったと思いますが、なんとか答えました。今振り返ると、英語力よりは、積極的にコミュニケーションをとろうとしているか、その姿勢を評価されていたのかなと思います。

合格の連絡にはもちろんびっくりしましたが、同時に、今の時点で自分が一番情熱をもって働けると思っていたところで働けると決まったこと、それがやっぱり本当にうれしかったです。

英語習得に関しては、どんな工夫をしていますか。

毎日英語に触れることを大事にしています。たとえば、ポッドキャストというアプリで、英語のラジオBBCニュースなどを毎日聞くようにしています。それから、図書館で英字新聞に目を通したり。話すほうはなかなか機会が限られますが、留学生や、外国にルーツのある友人にも手伝ってもらって練習をしています。

国際法を理解し共有できる「人」を増やすことを目標に

入省後は、どのような勤務になるのですか。

1年目は霞が関の本省勤務です。私にはスペイン語が割り当てられたので、本省勤務の間は、仕事を覚える合間に語学教官からスペイン語を学びます。2年目と3年目は国費留学をさせていただけるので、行先はおそらくスペインになるでしょう。そこで、通訳もできるレベルにまでなる、というのが外務省の方針と聞いています。
その後、おそらくスペイン語圏の国、たとえば中南米のメキシコなどに赴任になるのではないかと思っています。

今後の目標を教えてください。

在学中も入省してからも、語学や、国際情勢についての勉強をがんばりたいです。それぞれの国や地域、その文化も尊重しつつ、日本の国益を一番に考えて、外交を通してこの国の未来や国際社会の未来を創っていくことに貢献していきたいと思っています。

具体的には、法の支配が徹底された国際社会を創ること。法の支配が徹底されているという状態とは、いかなる権力や人為的行為にも法が優先する状態だと私は理解しています。守られるべき規範が守られ、武力による解決は許されない国際社会を創ることが理想です。

現時点で私は、国際社会が国際法を理解していないのではないかと結論づけています。ということは、国際法を理解している人を増やすことが必要。日本が中心となってほかの国を巻き込みながら、国際法の重要性や普遍的価値を理解し共有する人を増やせば、彼らが自分の国の外交方針に反映させていくことができる。人への投資が不可欠だと考えています。

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