教育の現場では今、高校時代から「総合的探究」という時間が設けられ、地域課題をテーマに様々な学習が提供されています。その学びを中断せず大学でさらに発展させ、学生たちがいよいよ社会に出る時に、地域課題をローカルにもグローバルにも解決できる即戦力となる人材を育成するのが共創学環です。
大きな特徴の一つが、文理融合。たとえばデータサイエンスを扱いますが、そのデータをどう活用するか、どちらかというと文系寄りの学問です。企業やシンクタンクなどが取り組むのと同じ、実践的なデータサイエンスを学びます。加えて、経営・マネジメントのほか、多文化共生やコミュニケーション分野、そして、人文科学や公共政策、自然科学科目等も配置し、幅広い知識と視野を持つ人材を育成します。
そしてもう一つ、共創学環が武器としているのが、自治体や、金融機関をはじめとした企業が参画してくれていること。大手商社やIT企業も含め、共創学環の設立には最初から民間企業が興味を持ってくれました。学環のカリキュラムも、教員だけではなく自治体や企業とともに「共創」でつくっていますし、実際の授業に自治体や企業が入ってくれていることも大きな特徴です。
共創学環では、2年生で「データサイエンス・自然科学・生命科学系」「経営・経済・公共政策系」「コミュニケーション系」「多文化共生系」の4つから選んで学び、3年生から「地域イノベーションコース」と「グローバルイノベーションコース」という専門コースを選択します。
このうち、地域イノベーションコースでは、地域の課題解決に取り組む自治体や、銀行をはじめとした民間企業などが参画する地域課題解決実践プログラムを提供。ここで、高校で見つけてきた地域課題に引き続き取り組んでもらうこともできますし、大学で新たに課題を発見し、新たに解決に取り組んでもらうこともできると思います。一方グローバルイノベーションコースは、もともと文学部にあったコミュニケーション情報学科と、以前設置されていたグローバルリーダーコースの発展形です。これらの学科およびコース卒業者はグローバルに強く、商社などの企業からも引く手あまたでした。地方創生は日本に限ったことではなく、海外諸国にも共通する課題です。地域課題をグローバルに解決する能力を養うのがこのグローバルイノベーションコースです。
どちらのコースも3年生ではインターンシップが準備されており、そのプログラムも、参画してくれている自治体や企業とつくっていきます。学生たちは、社会人が学ぶリカレント教育の場に参画してもかまいません。共創学環はそういった様々なフィールドを用意していますので、そこでチーム型の学習をしてもらい、自分の関心や思いを社会課題解決につなげて成長し、卒業後、即戦力として社会で活躍してほしい。1期生も、これから続く学生たちも、私たち熊本大学、そして産学官金が本気で支えていきます。
熊本は、多くの地方自治体と同じく人口減という課題を抱えています。しかし同時に、半導体の世界企業が進出し活性化するという、その両方が見られるまたとない場所。学びと実践の場としては最先端であり、学生にとってとても貴重な学びの場だと考えています。
今年度入学した1期生が、これからどう成長してくれるのかは未知数です。しかし、共創学環の歴史をつくっていくのは間違いなく彼らであり、彼らがこの学環の羅針盤となる。彼らの成功も失敗も伝統になっていきます。失敗は怖いことですがだからといって受け身にならず、積極的にいろいろな場所に飛び込んで成長してくれることを期待しています。

地域イノベーションコースは、社会課題の中でも地域に着目した課題の解決に資する人材を育成することを目的としています。たとえば九州内でも、福岡県のように人口が増えている地域もあれば減少している地域もある。持続そのものが厳しい地域もあります。そんな地域が直面する課題を、実践的学びを通して理解し、解決する。地域の課題は複雑で様々な人が関わりますから、その中で力を合わせて取り組んでいける力を養います。このコースの特徴の一つが、3年生での地域共創プロジェクト演習。いろんな地域にでかけていき、実際に地域課題解決に携わる方々の話を聞くだけでなく、インターンシップも含め一緒に活動をする演習です。インターンシップには、地域創生に力を入れている様々な企業も協力してくださっています。
今年度入学した1期生は、私から見ると本当に「キラキラ」しています。共創学環の入部式では、初対面同士で緊張しているかと思いきや、もうワイワイガヤガヤと楽しそうに話していて、すばらしいと感じました。周りの人とのコミュニケーションを積極的に楽しめる彼らが、実際のフィールドで地域の人たちと交わったとき、いったいどんなことが起こるのだろうと今から本当に楽しみにしています。

グローバルイノベーションコースの大きな特色が、留学を含めた海外研修に対するサポートの手厚さ。一般的に、大学での長期留学は、2年生で申請し1年間準備し、3年生で留学となります。しかしそれでは帰国が4年生の初めごろとなり3年生で行う就職活動ができず、卒業に5年かかることも少なくありません。グローバルイノベーションコースでは留学希望者に1年生のうちからしっかりと準備をしてもらい、2年生の後期から留学できるよう支援。そうすることで、3年生の前期に帰国でき、同級生と同じスケジュールで就職活動や卒業ができるようにしています。もちろんそのほかにも、短期留学や海外の語学学校研修、国内における外国人支援、熊本のプロスポーツチームの海外への広報などを通したグローバル研修なども支援しています。
学生たちは、たとえばSDGsの達成が重要だとは学んでいますが、実社会でどれだけ達成できているかなどは把握しておらず、学んだ知識が彼らの行動や考え方に直結しているかは疑問だと思っています。共創学環で私たちが育成したい人材はまさに「行動力があり、信念をきちんと持っている人」。自分は何に興味があって、社会のどこに対して貢献できるのかを発見し、行動に移せる人になってほしいです。共創学環は、学生たちの興味や生きがいを見つけ、開発していく場所になりたいと考えています。