
CariCは、美術がメインの活動領域。特に現代美術の作家を対象に、人物や作品、活動の紹介を情報技術で支援する事業です。
美術を評価する場合、作品そのものはもちろん、作品の背景にどんな歴史があり、誰がどんな風にその作品を作ったのかなどの文脈も大事だと思うんです。それを伝え評論するために、アートにおけるストーリーをデジタルデータとしてアーカイブし、アートを研究する人々が参照できるような状態にすることが目標の一つ。たとえば、美術館の学芸員さんは、学術研究として作品がどんな時代にどう作られたのかなどを調査します。学術論文であればデジタルライブラリーなどで調べることができますが、美術作品や作家の場合はそういったものがなく、本当に手探りの状況。それら情報をうまくデジタルの領域に乗せて参照できるようにするのがCariCの事業です。
熊本大学1年生の時は、自分で何かプロダクトを作ってみたいというただの興味しかありませんでしたが、「夢プロジェクト」で採択され今の事業の前身といえるような活動を3年生まで行いました。一方で、熊本大学社会自由研究サークル
SIRKUの立ち上げにも参加。活動内容も自由で、スタートアップにこだわらなくても、いろんな成長の仕方があるという柔軟な考え方を養えたと思っています。
熊本大学卒業後は東京都立大学大学院のインダストリアルアート学域に進学しました。熊本大学で専門的に学んだ情報工学に加え、CariCの技術を社会実装するにはもっと美術領域のことを知らないといけないし、少しでも業界の中に足を踏み入れるべきと考えたことが理由。現在は、アートを領域としている先生のもとで学んでいます。
美術領域を事業の場としたのは、もともと現代美術が好きだったから。これからも芸術や文化領域で事業を進めたいと思っています。「夢プロジェクト」参加もSIRKU立ち上げも、「行ってみるか」「やってみるか」という感じでスタートしました。自分の経験から言わせてもらうと、社会には危険な場所もありますが、大学に守られている大学生のうちなら安心して一歩を踏み出せます。大学生のうちに様々な人たちに出会い、ぜひ価値観を広げていってほしいと思います。
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| 熊本大学4年次の2023年、「熊本版未踏的プロジェクトIPPO」にも採択。その際のプレゼン風景 |
展覧会での技術協力
松野さんはCariCの事業として、2025年4月から6月まで熊本県宇城市の不知火美術館で開催された「働正(はたらきただし)」展で技術協力を行いました。不知火町出身の前衛美術家・働正氏と、様々な人物やモノ・コトとの関係性を可視化したダイアグラムを壁に投影。ダイアグラムは来館者が自由に操作して関係性を探ることができるようになっています。
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| 働正展(左)/松野さんの作業風景(中)/制作したダイアグラム(右) |