研究室探訪 末永研究室
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研究の狙いは、子どもたちに、体育の授業を通して運動好きになってもらうこと。たとえば記録を取る場合も、記録だけではなく、一人ひとりが自分の力をどれだけ伸ばせたかに着目。そうすると、運動が不得手な子のほうが伸びしろがあり、楽しさを感じられるようになります。とはいえ、勝つ喜び、負けるくやしさ、上達する工夫や人を応援する意味を学べるのも体育授業の独自性。末永研究室では、体育が好きになり、かつ、技能向上や工夫・協調を学べる効率的な体育授業の組み立てを考えています。
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熊本大学大江総合運動場にある渡鹿体育館は、熊本ヴォルターズが練習施設として活用しています。ここでの様々な活動が末永准教授の研究対象。戦術や対戦相手のデータ分析も行いチームへフィードバックしています。データの取得は学生たちも協力。学生がプロスポーツチームの強化に関わる取り組みをする大学は珍しいそう。そのほか、末永准教授が前任大学で、吉本興業の芸人さんに依頼して作った「投能力向上ダンス」をアレンジした「ヴォルターズリズム体操」を取り入れた実証体育授業を、熊本市内の2小学校で実施しています。
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この研究室には体育教師を目指す学生たちが所属。彼らには、体育好きな子どもを一人でも多く育ててほしいと思っています。子どもの頃の運動習慣は大人になっても持ち越すことが多くの研究からわかっていますから、健康な人生を送る上で子ども時代から運動好きであることは大切なんです。
熊本ヴォルターズとの共同研究においても、学生たちは良い経験を重ねています。教職に就く人は基本的に、卒業後も「学校」という同じ世界に居続けることになりますから、練習のお手伝いなどで社会の様々な方たちと交流できることは貴重です。時に真剣に怒られることもありますが、それも、学生を大人として扱ってくれている証。社会での振る舞いという授業では得られない学びを、学生たちは地域やチームの皆さんから得ています。
中学校の体育教師になりたくて、体育教育を中心に学べるこの研究室を選びました。卒論では、小学生に対し、段ボールでできたハードルを使う検証を行う予定です。板でできたハードルだと苦手な子はどうしても恐怖心を持ってしまうため、小学校のうちに段ボールでできたハードルで、その楽しさを知ってもらいたいと考えています。末永准教授がよく例えるのが、ピーマン。そのままでは食べられないけど、料理で工夫すれば食べられます。運動嫌いな子も、工夫次第で好きになってくれると思います。
私は陸上競技が専門なのですが、実は水泳などは苦手でした。だからこそ、苦手な子の気持ちもよくわかります。体育が苦手な子を絶対に置き去りにしない、そんな体育教師になりたいです。
![]() ショッピングモールで開催されたパブリックビューイングで学生が実施した「ヴォルターズリズム体操」指導の様子 |
![]() 賑やかな末永准教授の研究室ドア |
学部での卒論では、球技を使った課題解決学習を研究。子どもたちが、何が課題なのかを把握しやすい教材を使い、その課題を解決して新たに簡単にしたゲームを実施、そこにまた課題を見つけるという解決学習のサイクルを、技能向上や学びにつなげる検証を行いました。現在は、課題解決学習に加え、積極的に授業に参加してくれるような授業デザインを研究しています。たとえば球技のルールを能力の差に関係なく参加できるようなものにする、話し合いの時間を設定するなど。話し合いでは、運動が苦手な子も積極的に発言できる視点を準備するなどの工夫を考えています。
私が目指しているのは高校の体育教師。高校は、体育を学ぶ最後の期間です。社会に出た後にスポーツをするとしても、同じレベルの人だけが揃うことはありません。苦手な人も参加できる、合意形成しながらスポーツを楽しむにはどうするか、そういったことを伝えられる授業ができればと思っています。
![]() 2024年に熊本大学で行われた学会で発表された、末永准教授と学生のポスター |
![]() なんでも話し合える研究室仲間 |
熊本ヴォルターズ選手に食の好みをヒアリングし、桜十字の管理栄養士さんから指導を受けて、熊本県産の食材だけを使ったお弁当を企画。和水町の業者さんに製造してもらい、試合会場や学内の売店での販売も学生が行いました。