東大分室(東大ナノシステム集積センター分室)
大学間連携にも期待!

笠間 敏博 Toshihiro KASAMA
東京大学大学院 工学系研究科
バイオエンジニアリング専攻 特任准教授
熊本大学 半導体・デジタル研究教育機構 特任教授
中村 有沙 Arisa NAKAMURA
東京大学 工学系研究科
総合研究機構 一般技術職員
熊本大学 大学院先端科学研究部 客員助教

分室という場を拠点に新しい「化学反応」が起こる!

東大分室には、東京大学のお二人が常駐しています。まずは自己紹介を。

笠間 東京大学では、工学系研究科のバイオエンジニアリング専攻に所属しています。主な研究は医工連携。病院での診断や治療において、現在の技術では不可能なことを可能にするものづくりを目的にした研究を行っています。たとえばコロナのようなウイルス感染を分析する機器には、感度や時間、コストに課題があるものもあり、その解決が私の研究目標のひとつです。

中村 私は、東京大学では技術職員、熊本大学では客員助教として活動しています。東京大学では、ナノシステム集積センターが運営する「武田先端知スーパークリーンルーム」で、研究設備の広報や薬品・装置の点検を担当していました。熊本大学では、両大学や熊本の地元企業をつなぐ共同研究の推進のほか、半導体デバイス工学課程の支援やポータルサイトの立ち上げなどに取り組んでいます。

両大学は以前から連携していましたが、分室という「場」を作った目的は何ですか。

笠間 熊本大学と東京大学は、2000年代初頭から半導体などの分野で研究・教育両面の協力を重ねてきました。その長年の協働をさらに発展させ、より持続的で実践的な連携を実現するため、熊本大学オープンイノベーションセンター内に設置したのが「東京大学分室」です。
本分室は、両大学の知と技術を融合し、研究・教育・産学官連携を一体的に推進する拠点として機能しています。目指しているのは、熊本県や地域企業、自治体とも日常的に交流し、現場の課題を迅速に研究テーマへと結びつけ、成果を社会に還元する「共創の場」となること。また、東京大学ナノシステム集積センターをはじめとする先端研究拠点とも緊密に連携し、熊本から世界へと、連携研究と人材育成の新たな形を発信していくことを目的としています。

中村 東京大学ナノシステム集積センターには23名の研究者が所属。小川学長からは、「熊本大学で近い研究をしている方がいれば、ぜひ紹介してほしい」とのお話をいただいています。また、熊本大学にしかない衝撃実験棟などの特色ある施設を活用し、新しい化学反応を生み出せないかという議論もなされているんです。熊本大学内の東大分室が、そうした橋渡しの役割を担えればと考えています。

地域から始まるイノベーションや半導体分野への女性進出も目標

分室があるSOILの環境はいかがですか。

中村 東大分室のほか、東北大学や他大学の分室も加わる予定です。分室同士の交流からも新しい化学反応が生まれることを期待しています。

笠間 SOILは、研究・教育・産学連携を一体的に推進するために整備された最新施設で、非常に恵まれた環境です。共同研究者や企業関係者が集まりやすいオープンスペースも設けられ、学内外の研究者が自然に交流できる雰囲気があることも特長。また、クリーンルームや分析機器室などの先端設備も充実しており、研究相談から実験、試作までを一気通貫で迅速に進められるのが大きな利点です。半導体工学を中心に学際的な研究者が集うこの環境では、熊本大学と東京大学、さらに企業や自治体との日常的な連携が生まれ、共創のスピードが格段に高まると感じています。

今後の展望をお聞かせください。

笠間 今後は、熊本大学と東京大学の教員がより緊密に連携し、熊本県や地元企業の皆様とともに大型プロジェクトの採択を目指したいと考えています。SOILという共創拠点を最大限に活用し、現場の課題を直接研究テーマへとつなげる仕組みを構築することが目標。たとえば、熊本市内の慢性的な渋滞問題、地域の水資源の持続的利用、半導体産業の人材不足など、地域固有の課題に対し、工学・データサイエンス・社会実装の観点から総合的に取り組んでいきます。熊本発の課題解決モデルを全国に発信し、大学の知と地域の力が融合する「地方から始まるイノベーション」を実現させたいですね。

中村 半導体分野は、教員・学生ともに女性が少ないことが課題です。私は、半導体技術にアートの要素を取り入れ、たとえば半導体ウエハをカットしたり、スピンコート技術を応用したりしてアクセサリーを作るワークショップを定期的に開催しているんです。女性の視点も積極的に取り入れ、次世代の女性たちに半導体の魅力を伝える活動にも力を入れていきたいと考えています。


2025年8月2日に開催されたオープンキャンパスでのワークショップ風景。
女子中高生限定で、半導体チップの破片を自分で切り出し、ペンダントを作る体験をしてもらいました。

お守り型ストラップ

付箋

熊本大学大学院先端科学研究部と東京大学大学院工学系研究科との部局間連携協定記念グッズ

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