高度半導体人材を世界へ

高度半導体人材を世界へ

熊本大学理事・副学長
宇佐川 毅

熊本大学 理事(教育・学生支援担当)。2003(平成15)年より熊本大学教授。工学部長などを経て、2020(令和2)年より現職。

熊本大学の新たな挑戦

 世界最大級の半導体メーカーであるTSMC(台湾積体電路製造)をはじめとする、半導体関連企業の新たな進出などにより、今、熊本県は大きな変革期を迎えています。また、近年の急速なデジタル技術の発展により、「Society 5.0*」などの新たな社会の姿が提唱されています。このような社会の実現には、「半導体」が必要不可欠です。
 今回の特集では、社会変革の原動力になるために本学が推進する高度半導体人材の教育をご紹介します。
*Society 5.0 … 狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続く、新たな社会という意味を持つ。「サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(超スマート社会)」と位置付けられている。

新生「シリコンアイランド九州」は熊大の高度半導体人材の輩出がカギ

半導体関連企業が集積するにはワケがある

 半導体関連企業が1,000社以上集積した九州は、「シリコンアイランド九州」と称され、1980年代には全盛期を迎え、日本が世界の半導体産業をリードする支えとなりました。その理由として当時、九州には工学系の高校や大学が多く、人材を確保しやすかったことや十分な工業用地を入手できたことが挙げられます。さらに熊本県が3,000m級の滑走路を持つ空港を整備し、ジャンボ機による空輸を可能にしたことで物流としての強みがありました。1990年代以降、日本の半導体産業の競争力は低下していましたが、今回のTSMCの熊本進出を契機として、新生「シリコンアイランド九州」の実現が進んでいます。

高度半導体人材の育成・研究で熊本・九州そして世界に貢献

 熊本大学では、新生「シリコンアイランド九州」のカギとなる高度半導体人材の育成の強化に、小川学長のリーダーシップの下、全学として精力的に取り組んでいます。
 まず教員組織として2023(令和5)年4月に、「半導体・デジタル研究教育機構」を設置しました。これは、従来の「総合情報統括センター」、「教授システム学研究センター」および「先端科学研究部附属半導体研究教育センター」の研究者を集約したもので、「半導体人材の育成」を推進するためです。
 また教育組織として、2024(令和6)年4月に、学部相当の教育組織(学部等連係課程)「情報融合学環*」と学士課程「工学部半導体デバイス工学課程」を新たに開設し、新入生を迎えます(P7~9参照)。さらに、2025(令和7)年には、大学院自然科学教育部に半導体・情報数理専攻(仮称)を設置し、半導体関連企業からのニーズが高く、設計・製造・開発等を担うことができる博士前期課程(修士課程)修了者に注力し、人材育成を行う予定です。
 日本では、年間数千人規模の半導体人材が必要ともいわれています。それを受けて本学では、具体的には、次世代半導体等の新規事業の創出を担う研究人材、半導体の事業戦略・研究戦略を担うトップ人材、ベンチャー起業家など、半導体産業をリードする人材の育成に取り組んでいきます。
*学環 … 既存の学部組織の枠を超えて分野横断的な教育プログラムを展開できる「学部等連係課程」制度に基づいた学部相当の教育組織(学士課程)。2019(令和元)年8月に学校教育法施行規則および大学設置基準等の一部改正により新たに設けられた

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