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猿渡 淳二 教授 |
「なぜ病気になる人とならない人がいるのか?」
「なぜ人によって薬の効果に差があるのか?」
―薬物治療学でその答えを探求する猿渡研究室を訪ねました。
遺伝子情報や普段の生活習慣等、医療機関のご協力の下で提供されるさまざまなデータをAIなどで解析し、薬効や副作用の出現、病気の発症リスクなどを予測する研究に鬼木准教授や学生たちと一緒に取り組んでいます。「病気のなりやすさや薬の効きやすさ、副作用の出やすさを適切かつ正確に予測することで、患者さんの負担や不安を軽減して、すべての人が健康で豊かな生活を続けられるシステムを提供したい」と、猿渡先生は話します。
プログラミング言語「Python」
猿渡研究室では、人工知能(AI)などに活用されるプログラミング言語「Python」を用いて独自の解析プログラムを構築。薬の反応性や副作用、病気のなりやすさを予測している
薬物動態解析ソフト「NONMEM」*
非線形混合効果モデリングソフト「NONMEM」を使って、投薬前に個々に合った適切な薬の量を予測することを目標に解析を進めている
*NONMEM … Non-linear Mixed Effect Modeling: 非線形混合効果モデリング
うつ病などの心の病気、お年寄りの物忘れや運動機能の低下、糖尿病などの生活習慣病、がん等の患者さんを対象に、熊本大学病院をはじめとするさまざまな医療機関の情報を多角的に解析。例えば、うつ病の薬は効果が出るまでには約1カ月を要しますが、治療開始後早期に薬効を予測できるシステムを構築。実用化へと期待が高まります。
*個別化医療……同じ病気の患者さんに対して、一律に同じ治療を行うのではなく、 個々の体質や遺伝子などを調べた結果から治療法を選ぶこと
糖尿病網膜症の累積発症率を精査したところ、女性は男性よりも糖尿病による血管障害が発症しやすいことが明らかに。性差のほか、生活習慣、遺伝子情報などが発症に影響を与えると考えられている
糖尿病網膜症の累積発症率を精査したところ、女性は男性よりも糖尿病による血管障害が発症しやすいことが明らかに。性差のほか、生活習慣、遺伝子情報などが発症に影響を与えると考えられている
遺伝子情報のほか、病気の特徴、薬の体内量、薬への感受性に加え、個々の患者背景が、大きな個人差となって治療反応性へ影響。そうした多様な情報を解析することで、個別化医療の実用化が期待される
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大学院薬学教育部博士課程1年 |
AIを用いて、患者さんに必要な薬を選別するシステムの構築に挑戦しています。この研究室を選んだ理由は、薬の治療効果や副作用の現れやすさが患者さんによって異なる点に着目して研究を進めることで、患者さん一人ひとりに適した医療の提供に貢献したいと思ったからです。
研究室に入るまでは、プログラミングの経験はありませんでした。薬学研究の一環として、プログラミングに挑戦し、さまざまな角度から未解明の領域を切り拓く研究プロセスはワクワクします。
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薬学部薬学科5年 |
抗がん剤の副作用を予測・予防できるよう、がん患者の実際のデータを用いて解析しています。
先日は学会で、抗がん剤の副作用である“しびれ”を軽減する漢方薬が、臨床でどれくらい使われているかなどを、熊本大学病院のデータをもとに解析し、ポスター発表をしました。
実際の患者さんのデータに触れる機会が多いのが魅力です。卒業後、薬剤師になって社会へ出たときに、研究室で培った経験や知識を活かしたいです。
薬の効果や病気の発症を多様な情報処理で俯かんすることで、全く新しい医薬品や医療システムの開発につなげたいと話す猿渡先生。“熊大発”の治療・予防システムを作製し、すべての人が最適な予防・治療を受けることができる医療の実現を目指します。
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