熊本大学×株式会社ジャパンシーフーズ

パルスパワー技術で寄生虫アニサキスから生食文化を守る

産業ナノマテリアル研究所
浪平隆男 准教授

食中毒の原因になることで知られる、魚の寄生虫アニサキス。
魚を生で食べる食文化がある日本では、大きな問題となっています。
この課題解決に水産加工企業とともに挑んだのが、産業ナノマテリアル研究所の浪平隆男准教授です。

魚の身に影響を与えないマイクロ秒の超巨大電力

 魚に寄生するアニサキス。魚を冷凍するか火を通せば死滅しますが、生のまま食べた魚の中に生きたアニサキスがいると、人は激しい食中毒を起こしてしまいます。
 このアニサキスを、魚に火を通すことなく死滅させる装置を、株式会社ジャパンシーフーズ(本社・福岡県)と共同開発したのが浪平隆男准教授です。浪平准教授の研究テーマは、非常に大きな電圧を、100万分の1秒であるマイクロ秒から、1億分の1秒であるナノ秒という瞬間的な時間だけ発生させる「パルスパワー技術」。これを応用したパルスパワー殺虫装置を使うと、アジやサバの身にほとんど影響を与えず、アニサキスを殺すことが可能です。
 「連携のきっかけは、私の研究の話を知ったジャパンシーフーズさんがコンタクトを取ってこられたこと。アニサキスを駆除するために様々なことを試してきたけれど、解決策が見つからない、ということでした」と浪平准教授。共同開発はすぐに始まり、約3年をかけて、100%死滅するパルスパワーの条件を検証。ジャパンシーフーズでは2021年秋からパルスパワー処理をした生のアジの試験販売を開始しています。

各地に育まれた食文化を絶やすことなく後世へ

 アニサキスは冷凍をすれば死滅しますが、解凍後に味が落ちるという課題があります。「ジャパンシーフーズさんの取引先では、安心であれば生がほしい、というところが多く、それに応えることができました。今は処理数を増やす装置を開発しています」。
 他にも、熊本県の馬肉や、青森県のシラウオなど生で食べるものの害虫駆除について相談を受けているほか、海外との連携も始めています。「ラオス中南部には、生魚や発酵させた魚を食べる食文化がありますが、タイ肝吸虫という寄生虫が胆管がんを引き起こすことが知られています。日本の国立研究開発法人国立国際医療研究センターが中心となるプロジェクトで、パルスパワー技術を使って、この寄生虫を死滅させる装置の開発研究が実施されることも決まっています」。
 浪平准教授は「冷凍がダメというわけではなく、生のままでも大丈夫という選択肢を残すための技術開発。日本の生食文化をはじめ、様々な土地や国の食文化を後世にも残したいと考えて研究を進めています」と話してくれました。

サバ、アジ、カツオ、サンマなどの内臓に寄生する線虫の一種アニサキス。
幼虫は、長さ2~3cm、幅は0.5~1mm程度

高精度で調整された塩水にアジフィーレを浸し、1億ワットの瞬間的大電力を350~500回かけることで殺虫率99.9%以上が確認された

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