この記事は学生広報スタッフが担当しました!
こんにちは、学生広報スタッフです!
みなさんは、熊本県上益城郡御船町が「恐竜の郷」として知られる、国内でも有数の化石発掘地だということをご存知でしょうか?
御船町周辺は約9000万年前の後期白亜紀の地層である御船層群が広く分布しており、多様な恐竜化石が発掘されている地域です。
2025年の春に日本初の新種の翼竜化石ニッポノプテルス・ミフネンシスが発表されたことも記憶に新しいのではないでしょうか。名前の通り、この翼竜化石も御船産です!
そんな御船町にある御船町恐竜博物館では、本学卒業生である池上直樹さんが主任学芸員として日々御船町周辺で発掘された化石や地質について調査をしています。
池上さんは卒業研究の調査中に御船町で恐竜の骨化石を発見し、御船町恐竜博物館を開館からそばでずっと見守ってきました。
新種の翼竜化石発掘に代表されるように、現在も成長を続ける御船町恐竜博物館。
化石の調査・研究の最前線で活躍する池上さんはどのようにして化石の世界に足を踏み入れたのでしょうか?

私はもともと熊本県に生まれました。3歳の頃から高校卒業まで山口県防府市に住んでいましたが、親が二人とも熊本の出身で、毎年正月には親と一緒に熊本に帰り、よく遊んでいました。
高校生になって進学先を考えた時に、よく知っている場所で街が大きい熊本がいいなと思って熊大を受験しました。
結果的に、熊大は落ちちゃって浪人しました。それから熊本県内の予備校に1年間通って、「あぁ、やっぱり熊本楽しいな」と思ったので、再度熊大を受験して入学しました。
高校生の頃から、なんとなく「工学部に行こう」と思っていましたが、予備校で一年間過ごしてみて、周りの人たちの持っていたしっかりしているビジョンに影響を受け、「モノを作るより人の役に立つ仕事がやりたいのかな」と思いました。最終的には、教員にもなりたいし、研究もしたいということで、土壇場で文転して教育学部を受験しました。
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全くなかったです。
高校時代は物理か化学か生物の3つしか取れなかったので地学という世界すら知らなかったです。物理と化学を選択していて、自分は物理が好きだったので、大学に入った当初は物理に行くのかなくらいしか思ってなかったですね。
物理の中でもコンピュータ系をやりたいという同級生が結構多くて、「他人と同じことやるのもなぁ…」と思って全然やったことがない地学をやろうと決めました。当時、先生が化石か阿蘇火山の二人しかいなくて、化石をやろうかなととぼんやり思っていました。そんな時に、野外調査で「この石たたけ」と言われて、石を叩いたら普通の貝の化石が出てきたんですね。「え!?石たたいたら、石の中から化石出てくるんですか!?」っていうのが初めての経験でした。その時に人生で初めて自分で取った化石はモノチスという中生代の貝の化石でした。「なんで石叩いたら出てくるの?」「なんで割れたらちょうどそこに出てくるの?」という感じで、そんなことすら知らない状態でスタートしました。
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| モノチスの化石とモノチスの化石を手に持ち感慨に耽る池上さん |
そうですね。この貝の化石に出会って「地層を調べたり、化石を調べたりするのは面白いな」と思いました。野外で調査して、地層がどういう繋がりがあるかだとかどういう構造があるかだとかどんな重なりがあるかだとか、化石からその地層ができた時はどういう環境だったのかとかそんなことを知る、誰も見たことのない過去の世界を考えられるということは楽しいなと思いました。3年生になってやっと自分が大学で勉強したいということが見つかり、研究室も指導教官の先生も決まりました。3年生は卒業研究はまだ始まらないんですけど、野外調査から慣れておきたいと思っていました。そこで指導教官の先生に、田浦町(現・芦北町)の海岸を歩いて、白亜紀の地層やジュラ期の地層を調べるよう勧められました。実際に調査してみると、初心者が歩くには地層がぐにゃぐにゃしていて複雑で難しく、「こりゃもっと勉強しないとダメだな」と思いました。
3年生の終わりに指導教官の先生に大学院の修士課程まで行きたいということを伝えると、修士課程でも研究できるテーマにするために御船町での調査を提案されました。御船町の天君ダム近くの山の斜面から貝の化石が少し出てくる。不鮮明でよくわからないから,化石を採取して研究し、合わせてその地域の地層がどう重なっているか、どう分布しているかということもちゃんと調べてくるということでした。それが御船町に来た初めてのきっかけです。
そうですね。テーマは二枚貝の化石を調べることで、岩を叩いて化石を見つけて集めていきます。それで、調査を初めて2日目くらいに、岩を叩いて割ったら骨が出てきたんですよ。貝は全然見つからないのに骨はたくさん出てきました。いまだに最初にフィールドとして与えられた天君ダムのところからはまともに二枚貝の化石が出てきてないですね。
化石って自分が何を見つけたいのかを意識してないと見つからないんですよ。たとえば植物化石専門の先生だと葉っぱの化石はよく見つけるんだけど、他の化石、たとえば貝の化石とかは全く見つけない。同じように、私は二枚貝の化石を探していたので頭の中は二枚貝でいっぱいで、骨が出てきても最初は「なんじゃこりゃ」と、貝じゃないから捨ててしまうんですよね。あとから「あっ」と思って、「さっきのやつってなんだったかな?」ともう一回見たら「これ骨じゃないか」と思って、恐竜の骨がそう簡単に出るとは思ってないけど明らかに骨に見えるので持ち帰りました。
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指導教官の先生の専門分野は中生代の二枚貝化石で、骨の化石に詳しい他の大学の先生を紹介するよと言われたんですけど、私は二枚貝化石の先生のもとで恐竜ではなく、フィールドを日本全国に広げた二枚貝化石の研究を行うことにしました。当時は恐竜が見つかると大騒ぎになって、学生がその中に入っていくというのは難しいし、日本は今みたいに恐竜の先生がいない、化石もたくさん揃うような状態ではなかったので、当時の研究は難しかったですね。大変な環境だったので、それを修士課程でやったとしても多分手に負えなかっただろうなと思います。それで二枚貝化石をやったんですが、修士課程の時に研究した地層は今となっては恐竜化石が出る地層が多くて、現在の仕事に役に立ったと思いますね。
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博士課程まで行こうという意識の高さは全くなくて、教員になっても自分が今までやってきたようなローカルな化石の研究をライフワークとして続けていけたらいいかなと甘く考えていて、中学校に勤めました。でも現実は違いました。学校の先生は研究どころか授業の準備をする時間すらなくて。授業一日やって夕方から部活やって、終わったらヘロヘロで。土日も部活で年中無休ですよ。
一学期過ぎて「これが現実か」と思ったところはあったけど、もうしょうがないと思っていました。
中学校に勤めて1年たった頃に熊本日日新聞社さん達が主催して熊大と一緒になって化石発掘の学術調査を行いました。そしたら天君ダム周辺で化石がたくさん出てくるんですよ。1日掘っただけでかなり化石が出てくるので、町としてもちゃんとした発掘調査がしたいということで、発掘調査の担当者として派遣され、天君ダムの調査を3年間しました。
ここにいた間、調査・研究をしながらいろんな先生ともお話をして、新しい発見は学会で発表するとか、自分なりにできることはやりました。自分の派遣の期限が切れる時に、今後の身の振り方を考えました。当時、まだたくさん化石が残っていたので最終的に御船町に残り、元武道場の入り口に「御船町恐竜博物館」という看板だけつけて、博物館をスタートさせました。武道場だったところの床と壁だけはちょっと綺麗にして看板つけて、展示ケースは4つ。それとカルチャーセンターから引っ張ってきたアロサウルスの骨格が一つ。それが1998年の4月ですね。
もうどこにも戻れないからそこでやるしかない。
学校の教員ではなく、学芸員として仕事をするためには研究できる力も必要だし、専門性をもっと高めないとやっていけないので、そこからまた改めて勉強・訓練しなきゃと感じつつ、いろんな人のお世話になりながらやってきました。1人しかいないし、勉強するにもなかなかね。議論できないと発想が偏ったり固まったりしてしまうし、モチベーションも上がりませんから。それで大学院博士課程に行きました。仕事しながら博士課程の学生として勉強をしていたので大変でしたね。
この博物館がスタートした頃の職員は1人、4月にスタートしたので、ゴールデンウィークはずっと受付に立ってたり、手作りのチラシを配ったりしていました。
そして、職員も増え、建物も大きくなって、今ではモンタナ州立大学付属ロッキー博物館と姉妹館提携も結んでいます。
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御船町恐竜博物館にいて多様な仕事をする中で、いっぱいやることがあって追いついてなくて自分の力ではどうすることもできないこともあって大変ではあるんですけど、学会に行ったりモンタナに行ったりして恐竜に携わっている世界中の人たちと話をしたり仕事ができたりすること、地域の化石をちゃんと残していく、守っていく、価値を見出していくというのが、そう多くはできないけど、ちょっとずつできているので、いい意味で休む暇がないというか、すごく充実していてありがたいことです。そして、そのきっかけになったのがなんといっても熊本大学の卒業研究なので、「熊大にきてよかった」というよりは、それが「全て」かなと思いますね。
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私たちの頃よりいろんな情報をたくさん持っていて、英語もちゃんと話せるし聞き取れるし、自分で勉強しようと思えばAIだってあるし、是非是非視野を広く世界に羽ばたいてください。自分の周りだけじゃなく世界に目を向けてください。「今」だけじゃなくて、少し長い時間軸で物事を考えましょう。そうすると大事なものが解決できるかもしれない。
高校生のみなさんに対しては、熊大は可能性がすごく広がる大学だと思っていますので、是非、熊大から羽ばたいていってほしいです。
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