漱石と八雲(ハーン)の知られざる姿を地域と世界へ!
漱石・八雲教育研究センターの挑戦
熊本大学文学部附属 漱石・八雲教育研究センター
濱田 明 センター長
- 所属
インタビュー担当の健児くんです。
現在、朝ドラ『ばけばけ』で注目されているラフカディオ・ハーン(小泉八雲)。ハーンは熊本大学の前身である第五高等学校で英語を教えていました。同じく五高で教壇に立ったのが夏目漱石です。熊大ゆかりの2人の文豪について、熊本大学が所蔵する資料の調査・研究などを活用した総合的な研究を行い、その成果を世界に発信しているのが「文学部附属漱石・八雲教育研究センター」。今回は、センターのユニークな活動について、センター長の濱田 明教授にお話を伺いました!

夏目漱石と小泉八雲が、その後の創作に大きな影響を与える時期を熊本で過ごしたことは広く知られています。文学部ではセンター設立以前から両者の研究が続けられてきましたが、2016年の漱石記念年で文化振興の機運が高まり、2017年にセンターが設立されました。
柱は「教育」「研究」「地域貢献」の3つです。教育では漱石やハーンの授業を行い、研究では熊本大学が所蔵する資料を活用して、調査・研究に取り組んでいます。さらに、それらの成果を地域へ還元して文化振興に活かすことも大きな目的です。
![]() 文法学部内にある「漱石・八雲教育研究センター」 |
五高記念館には、漱石やハーンの教師時代の資料が残っています。またセンターは、海外から寄贈された「ウッディ・ベイツ・コレクション」も所蔵しています。ハーンの著書を蒐集(しゅうしゅう)したウッディ・ベイツ氏の208冊のコレクションで、初版本や日本の出版社による注釈付きの作品など、大変貴重な資料です。日米のハーン研究者の尽力で、ゆかりの深い本学へ寄贈されました。
ハーンが世界へ日本文化をどう伝えたのかが見えてくる資料もあり、異文化理解を深める上でも興味深い窓口になっていると思います。
「ウッディ・ベイツ・コレクション」の蔵書も事前に申し込んでいただければ閲覧可能です。
※ウッディ・ベイツ・コレクションの閲覧について
https://www.let.kumamoto-u.ac.jp/soseki-yakumo/2025/10/09/post-549/
![]() 寄贈されたアメリカのハーン愛好家、ウッディ・ベイツ氏の蔵書「ウッディ・ベイツ・コレクション」 |
![]() 初版を中心に蒐集されたハーンの著書や関連図書 |
はい。地域貢献はセンターの柱のひとつで、多様な人々と漱石・ハーンをつなぐ重要な活動です。たとえば『アイラヴ漱石先生』(NPO法人くまもと漱石文化振興会・熊本大学文学部附属漱石・八雲教育研究センター編)は、漱石の文学世界と熊本各地を結びつけたガイドブックとして制作したものです。熊日出版文化賞も受賞し、若い世代が漱石に興味を持つきっかけにもなったと思います。
また、Soseki and Hearn Studiesという欧文の論文雑誌もVol.6まで発行しています。関わる研究者が自分の専門領域と漱石・ハーンを結びつけて論文を執筆し、世界に新しい研究成果を発信する役割を果たしています。
![]() センターの共同研究の成果として刊行された『アイラヴ漱石先生』と『夏目漱石の見た中国』 |
![]() 漱石とハーンの研究論文を収録した欧文雑誌Soseki and Hearn Studies |
はい。さまざまな場所で開催されるセミナーやシンポジウムでも、所属するメンバーが漱石やハーンの研究成果を発表しています。専門的な内容でも一般の方に分かりやすく届けるよう心がけており、毎回楽しみにしてくださる方も多いです。
2025年12月17日(水)〜23日(火)には熊本市内にある蔦屋書店熊本三年坂で熊大まちなかキャンパス「ラフカディオ・ハーンの熊本時代―『東の国から』を読む」を開催します。また20日(土)には「『ばけばけ』時代としての熊本時代―『東の国から』を読む」というトークイベントも予定しています。ぜひ気軽に参加していただければと思います。
![]() 12月17日から「ラフカディオ・ハーンの熊本時代」を開催 |
イベント情報およびトークイベントの申込はこちら
熊大まちなかキャンパス 「ラフカディオ・ハーンの熊本時代―『東の国から』を読む―」 – Kumadai Now 熊大なう。
私の専門は16世紀のフランス文学で、漱石やハーンを専門にはしていないんです。漱石やハーンに取り組む際、あえてフランス文学の視点で見てみると、これまで見えてこなかった関係や新しい解釈が浮かび上がるのではと考えました。
たとえばハーンはフランス語が堪能で、フランス文学の翻訳にも携わっていました。ジャーナリストとして日本文化を欧米に紹介しており、日露戦争後にはフランスで特に注目されます。「ロシアに勝った日本とはどんな国なのか?」という興味が高まっていた時期です。当時フランスでハーンがどのように受け止められたのかを考えるのは、フランス文学の視点からだからこそ見えるテーマだと思います。
日本文学、英米文学だけでなく、ドイツ語圏、フランス語圏、中国語圏など、さまざまな言語文化を専門とする研究者が集まっています。それぞれの視点で漱石とハーンを見ることで、皆さんが持つイメージとは違う新たな姿が見えてくることもあります。
今後もセンターから新しい発信を続けていきますので、どんな2人の姿が見えてくるのか、ぜひ注目していてください。