学生映画の面白さを伝えたい!学生が自らの手で作った「九州学生映画祭」

学生・課外活動
インタビュー担当

インタビュー担当の健児くんです。よろしくお願いします。
熊本大学には長い歴史をもつ学生サークルがたくさんあります。その一つが1964年創部の熊本大学映画研究部です。この映画研究部が九州の各大学に声をかけ、自主作成した映画を上映する「九州学生映画祭」が9月9日にされました。今回は、この映画祭について取材してきました!

「コロナ禍で途絶えた映画制作の技術を高めたい」から始まった

熊本大学の映画研究部は、映画を鑑賞する鑑賞班「Cinelab.」と、映画を撮る撮影班「Qbrick」に分かれて活動しています。多くの部員を抱えるサークルとして活動してきましたが、コロナ禍で活動が約3年にわたり規制を受け、撮影班は部員がゼロになってしまいました。撮影、編集など長年受け継がれてきた技術は途切れ、存続の危機に陥っていました。

映画を撮りたいという同じ思いを持った、ほぼ初対面の5人により活動が再開。ゼロからスタートした撮影班は、少しずつ部員を増やし、今では約40人の部員を抱え年間10本ほどの自主制作映画を制作するまでになりました。そんな中「映画制作の技術をもっと高めたい」という思いから始まったのが、九州の各大学との交流でした。「どうせ交流するなら、作った作品を上映して、その技術を磨きあおう」と、「九州学生映画祭」の企画がスタートしました。

5大学が集結。それぞれの魅力を感じさせる作品を映画館で上映

SNSのダイレクトメールで何度も呼びかけるなど、地道な呼びかけに答えたのは、「九州大学 映画研究部(Social Network)」「佐賀大学 映像サークル ボイ撮り」「九州産業大学 造形短期大学部 映画研究部」「長崎県立大学 映画研究会(SeaCaT)」でした。資金はクラウドファンディングなどを活用して集め、会場は、学生たちの活動に力を貸したいと、熊本市の老舗映画館Denkikanが特別に利用料を下げて提供してくれることになりました。

9月9日の九州学生映画祭に集まったのは、県内外の映画ファンなど約100名。多くの観客の前、映画館の大きなスクリーンと音響という学生の自主制作映画ではなかなか実現できない環境で、各大学の作品が上映されました。企画、脚本、撮影、編集とすべて自分たちで作り上げた映画は、1時間の長編作品から、数分の短編作品などテイストもさまざま。上映の合間には、初めて学生の自主映画を見たという観客から、学生へ感想などを伝える場面も見られました。

いろいろな人のコメントが次の作品づくりにつながる

作品の上映後は、「サッドティー」「からかい上手の高木さん」などを手掛けた映画監督の今泉力哉さんを囲み、各作品の監督と作品について語るトークショーも行われました。

まずはそれぞれの監督が制作した作品で苦労した点や工夫した点などを紹介。それに対し、今泉監督がコメントする形で進みました。今泉監督は、編集や脚本の良かった点や、もっと工夫できる点などをプロの視点で指摘。現役で活躍する監督だからこそのコメントを、学生たちはうなずきながら聞いていました。中には「とても美しかった」「編集のレベルが高い」という今泉監督のコメントも。学生たちはそれぞれにホッとしていたようでした。

閉会後は、参加した各大学の映画研究部同士がお互いの作品について話し合っていました。これまで、互いの作品を見たり、コメントしたりする機会はなく、同じように映画の撮影技術を高め合う仲間のコメントは貴重だったよう。「次の作品づくりに活かしたい」と話していました。

自分たちの良さも課題も見えた。もっと鍛錬したい!

今回の映画祭で、熊本大学の作品「vignette(ヴィネット)」を監督した熊本大学映画研究部の大川凜子部長(文学部3年)にお話を聞きました。

大川さん
今回の作品は「サイレント」にこだわりました。少ない言葉で演出するのがとても難しく、映画祭当日の朝まで編集していました(笑)。振り返ってみれば、運営しながら映画制作をするというのはとても大変だったなと思います。部長という、部員を引っ張っていく立場でもあるので、なかなか思ったようには準備も編集も進まない状況は、みんなの混乱もまねきました。準備不足もあって、もっとやり方があったな、とも思っています。


(上映した作品の撮影の様子)

映画館で作品を見た時は「大きなスクリーンで上映されることの重さ」を感じました。自分の作品と向き合う機会はこれまでもたくさんありましたが、観客の皆さんと一緒に大きなスクリーンと音量で自分の作品を見るという経験は初めて。特にトークショーは、この重荷を背負うだけの制作ができていたか、と自分に問う時間にもなった気がします。

今回の映画祭でいろんな作品を見ることで、視野が広げられたのはよかったと思います。こんな風に撮ってもいいんだ、とか、自分の良さはここにあった、とか。これまでは自分を信じてやるしかありませんでしたが、こうやってコメントをもらったり、いろんな作品を見て理解を深めたりしていかないといけないなと感じました。

他大学の学生映画を見て、みんな同じ葛藤をもっているなということも感じました。今回の映画祭を通してお互いに学んだことを活かして、九州の学生映画のレベルが上がっていくといいなと思っています。

大きな意味があった映画祭。もっと大きなイベントにしたい!

今回九州学生映画祭実行委員長を務めた、熊本大学映画研究部の山内雄大さん(工学部3年)にもお話を聞きました。

山内さん
今回の映画祭はどこともコネクションがないところから始まりました。そもそも映画館を借りられるかどうかもわからなかったし、借りたところで人が来てくれるのかも不安でした。各大学が参加してくれるかもわからない中、長崎県立大学の方と仲良くなれる機会があって、「ぜひ参加したい」という言葉をもらったところから前に進み始めました。その後、今泉監督がいらっしゃるということが決まって、加速度的に進み始めたように思います。運営側も「後戻りはできない」と覚悟が決まりました。

今回、九州のいろんな大学が一緒に集まれたことには大きな意味があったと思います。これまで、九州という近い範囲にありながら、他の大学がどんな作品を作っているか知らない状況だったのですが、同じことをやっている仲間を見つけることができたのではないかと思っています。

今泉監督を始め、いろいろな人に言っていただいたのが「続けてほしい」という言葉でした。今後はもっといろんな大学に参加してもらえるように、続けていきたいという気持ちを強くしました。今回声をかけたサークルの中には、コロナ禍から復旧しきれていない大学もたくさんありました。今回の映画祭を知ったところがたくさん参加してくれて、もっと大きな映画祭にしていけたらと思っています。


(こだわって制作した九州学生映画際のチラシとパンフレット)