インタビュー担当の健児くんです。よろしくお願いします。
学生の起業体験プログラム「夢プロジェクト」の2024年度の説明会が5月下旬、熊本大学の黒髪南地区インキュベーションラボラトリー1階リエゾン会議室で開かれました。今回は、この説明会の様子を紹介するとともに、夢プロジェクトを担当する熊本創生推進機構イノベーション推進部門の猪俣雄也特任助教と、参加した学生の話を紹介します。
夢プロジェクトとは、学生ならではのクリエイティブな発想を、大学が起業化に向けて支援する起業家教育プログラムです。起業に関する知識を学ぶ「アンビシャスコース」と、起業に向けて実践的な活動をする「プレジデントコース」があります。今年はアンビシャスコースに29人が参加し、プレジデントコースは4チームが活動しています。
猪俣先生「夢プロジェクトの目的は、起業体験、ビジネスを学ぶこと、それと仲間づくりです。社会に出てからも相談しあえる仲間をつくってほしいと思います。また、ビジネスコンテストにもぜひ参加して、外部の評価を受ける機会をつくってほしいです」
実は、猪俣先生は銀行員。今年4月、熊本銀行から出向して熊本大学に着任しました。銀行では人事部で新卒採用や労務管理などを担当したり、産学官連携事業に携わったりしていたそうです。熊本大学ではこれまでの経験を生かして、学生や教員の起業を支援します。
夢プロジェクトでは、ビジネスセミナーの実施や活動資金の提供のほか、実際に起業した人たちなどがメンターとして、ビジネスプラン構築に向けて相談に乗ります。
また、週に1回、起業やビジネス、体験等々気軽に交流する場「夢プロカフェ(仮)」をつくる予定だそうです。その他、採用担当者と話したり、身近なビジネスモデルを作ったり、起業施設を見学したりすることが予定されており、台湾やシンガポール、香港への海外視察の計画もあるとのことです。
猪俣先生「自発的に参加したら、きっと面白いものに出会えると思います。いろんな人とコミュニケーションをとってほしいです」
当日は、まず猪俣先生から夢プロジェクトの目的や今後のスケジュールについて説明があった後、10分間の名刺交換会が行われました。ビジネスの基本である名刺交換を体験してもらうことと、名刺交換を通して参加者同士で挨拶し、交流を深めてもらうことを目的に、参加者全員の名刺が各10枚ずつ配布され、会がスタートしました。
猪俣先生「まず相手の目を見て、できるだけ相手の名刺より低く差し出します。右手で出して、左手で受け取るのが基本です」
参加した24人の学生たちは、積極的に周りの学生と名刺交換を行い、自己紹介後、興味があることなどについて言葉を交わしていました。
次は、グループでビジネスプランを考えるワークショップを実施。猪俣先生は、教育、食事、スポーツ、就活、IT、農業、音楽、健康、言語、医療、学生、熊本、バイト、ラーメン、SNS、田舎という16のワードを示しました。
猪俣先生「これらの16のワードを組み合わせて、ビジネスプランを考えてください。ビジネスは組み合わせです。例えばiPadと電話を組み合わせてiPhone、ペンと消しゴムを組み合わせてフリクションができました。相反するものを組み合わせて革命的なものができます。これがあったら誰かの悩みが解決できる、という視点で考えてほしい。儲かるかどうかも少しだけ考えてみてください」
短い時間ではあったものの、学生たちは活発に意見を出しあい、ユニークなアイデアを次々と発表しました。
「【言語×IT×熊本】田舎の消滅しそうな方言をAI化して、翻訳もできないか」
「【就活×IT】過去の職業経験が生かせる60歳以上専門の転職サイトを作ってはどうか」
「【熊本×学生×IT×バイト】塾の少ない過疎地にいる生徒向けに、オンライン塾を開きたい」
「【熊本×IT】渋滞解消のため、信号を切り替える最適なタイミングを考えるソフトを開発したい」
「【熊本×学生】大学近くを流れる白川を渡れる水陸両用の自転車を作ってはどうか。シェアサイクル・チャリチャリのようにレンタルできるようにしたら、費用も抑えられる」
「【農業×音楽×IT】音で害虫を退ける機械を開発したい。また、音楽とITで患者のストレスが減らせるものが作れないか」
「【医療×ラーメン】カロリーや塩分を抑え、すべての人がおいしく食べられるラーメンを開発したい」
猪俣先生「面白いアイデアですね。考える時間があり、仲間がいれば、いろいろ出てきます。クリアするポイントはありますが、こうした発想をブラッシュアップしていくと新しいものが生まれてきます」
今回夢プロジェクトに参加している、工学部土木建築学科2年の伊是名柊さんと、法学部法学科グローバルリーダーズコース1年の三根巧太朗さんに話を伺いました。
伊是名さん(左)と三根さん(右) |
伊是名さん:私の父は、自分で始めた居酒屋を経営しています。私も自分で何かをしたい、いろんなことに挑戦したいと思い参加しました。
三根さん:私の父も自営業で、起業は楽しそうだなと思いました。これからの時代、一つの会社に就職するだけがすべてではないと思っています。明確なビジョンはこれからですが、少しでも将来のために可能性を広げられたらと思って参加しました。
伊是名さん:日常の困ったことを、ちょっと手助けできるようなお助けグッズのアイデアが出せたらと思っています。百円均一ショップのように、安価で手に入りやすい商品の開発などをしていきたいです。アイデアを積み重ねて、何か具体的に形にできればと思います。
三根さん:僕は現在、グローバルに活躍できる人材の育成を目的にしたグローバルリーダーコースに在籍しています。スポーツ、特に野球を通してアフリカの貧困問題に取り組めたらと思っています。
伊是名さん:学業に取り組むのはもちろんですが、積極的に外に出て、いろんなものに参加して、いろんな人と出会って、卒業するときの選択肢を広くできたらと思っています。
三根さん:僕も選択肢を広げたいです。夢プロジェクトで起業の理念を学び、留学生とも交流して、さまざまな価値観を学んで、人脈を増やし、世界で活躍できるようになりたいです。
猪俣先生にも話を伺いました。
猪俣先生:学生だけではなく、先生たちの起業の支援もします。先にあるのはベンチャー起業。ベンチャーの成長はスピードが速く、一気に上場することもあります。例えばコロナのワクチン開発はもともとベンチャーが研究していたもので、一気に世界中に広がりました。熊本大学では例えばがんの治療薬や半導体関連などで、新しいものが生み出せる可能性があります。
猪俣先生:4つのプロジェクトが進行中です。
1つ目は、自転車のギアに関連する開発、2つ目はVRに関する開発、3つめはアプリの開発、4つ目はジャンボタニシの防除に関する開発と商品化です。
学生たちは法学部、工学部を中心に、医学部や薬学部からの参加もあります。ほかの学部の学生と協力することで、熊本から新たなものを生み出したいと思います。
最後に、学生には積極的に多くの人と関わりを持ってほしいです。自分の意思で夢プロジェクトに参加してくれた行動力を活かして、自分自身の成長につなげてほしいと思います。
学生ベンチャー・夢プロジェクト
https://kico.kumamoto-u.ac.jp/staff_student/yumepro/