中学生とアーティストが一緒に 秋の美しい熊本大学をスケッチ 第1回熊本大学スケッチ大会

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インタビュー担当の健児くんです。よろしくお願いします。

2022年11月12日、熊本大学で「第1回熊本大学スケッチ大会」が開催されました。熊本大学教育学部と大学院教育学研究科の主催、熊本大学キャンパスミュージアム推進室などの共催で開催されたものです。この大会には、県内の中学生と熊本県美術家連盟のアーティストが参加。秋の自然に彩られた五高記念館を思い思いにスケッチしました。また、10月30日には、大信寺(人吉市南泉田町)や人吉市立人吉東小学校で人吉大会も開催し、人吉市や近郊の小学校・中学生が参加しました。この大会を企画した大学院教育学研究科の松永拓己教授にお話をお伺いしました。

復旧した五高記念館と秋の美しい風景を多くの人に見てほしい

今回のスケッチ大会は初めての試みだそうですね。

松永先生:2021年12月に、熊本大学が誇る赤煉瓦の建物、五高記念館の復旧工事が完了し、工事用の覆いが取り外されました。久しぶりに五高記念館を見た時、これは絵にするべき風景だと改めて感じました。大学には美の遺産がたくさんあります。この美しさを多くの人に見てほしい、その美しさを絵にしてほしいと思い、スケッチ大会を企画しました。

私は、教育学部で中学校の美術教員を養成しています。最近の中学校はさまざまな行事もあり、学校主催のスケッチ大会が開催できないところも少なくありません。屋外で風景を見て、じっくりとスケッチする時間は、中学生にとって大切な経験です。そこで、私たちが中学生にそんな時間を作ってあげたいという気持ちもあり、今回の対象者を中学生としました。

外部の方や大学生も参加しているようですね。

松永先生:今回は、特別協力として熊本県美術家連盟のアーティスト20名にも参加していただき、参加している中学生と同じくスケッチをしてもらいました。指導をするのではなく、アーティストが絵を描いている様子や、描いた絵を見せることで、中学生の皆さんには感じること、勉強になることがあったのではないかと思います。

美術家連盟の方には、最後の審査にも参加してもらいました。今回はあくまで「大会」で、賞のために絵を描くのではなく、楽しんでスケッチするのが目的です。あくまで、絵を描くことを楽しむ1日なのですが、がんばった証として賞(美連賞)を1つだけ決めることにしました。

中学校を回って参加者を募り、豪華な参加賞も準備

準備にとても時間をかけられたそうですね。

松永先生:中学生は、勉強や部活動などがありとても忙しいので、なかなか外部の行事に参加するのは難しいだろうと思いました。そこで、熊本市内や教育支援でつながりのある益城町などの中学校に声をかけました。

アーティストと一緒に絵を描くのは貴重な体験ですが、ちゃんと伝えないとその良さは伝わりません。いろいろな中学校に行って、先生だけでなく美術部の生徒さんにも大会の趣旨をお話しました。

松永先生:そのかいもあって、当日は13の中学校から約70人の中学生と、20名の大学生、20名のアーティストが参加してくれました。熊本市内の中学校のみならず熊本市外の益城中学校からの参加もありました。

多くの協力企業のご協賛のおかげで、豪華な参加賞もプレゼントできました。喜んでもらえて、うれしかったですね。

参加者の作品はどうでしたか?

松永先生:スケッチ時間は4時間くらいだったので、中学生はどのくらい描けるかな、と思っていましたが、とても個性的でのびのびした感性が伝わるものが多かったですね。美術家連盟の方と賞を選ぶのも難しかったです。今回、美連賞に選ばれたのは中学1年生の方の作品でしたが、とても1年生とは思えない力強いタッチが特徴でした。もう少し時間があれば完成度が高まったかな、という声もあり、次回以降、考えていきたいと思っています。

これからの目標を教えてください!

松永先生:この大会は「秋の豊かな時間を味わう4時間」という、心の豊かさを作る機会として、継続していきたいと思います。上手に描くのではなく、楽しんで面白さを感じながらスケッチすることはWell-beingにもつながります。生きる喜びを味わう時間として、多くの人に参加してもらえる大会にしていきたいですね。

参加者の方に伺いました!

●美連賞を受賞した武蔵中学校1年の山内菜々美さん:周りの友達の影響で絵を描き始めました。こういう大会に出るのは初めてで、4時間で描けるかなと心配でしたが、がんばって精一杯描きました。受賞できたのはとてもうれしいです。

●益城中学校の高村緑先生:コロナ禍でスケッチ大会などのイベントがほとんどなく、美術部として外に出たのはこの3年間ありませんでした。本当にありがたい機会でした。

●益城中学校2年・松本紗良(さら)さん・下田珠悠(みゆう)さん:4時間も描き続けられるかなと思っていたけれど、やってみたら時間が足りなくて驚きました。イチョウがとてもきれいで、楽しく絵が描けました。

●熊本大学教育学部3年の小畑漱祐さん:今回の大会は運営側として参加しました。参加した中学生の絵は煉瓦の描き方も一人ずつ違っていて、生徒たちの個性が伝わるものでした。小学生のころにスケッチ大会に参加したことがあり、絵を描く楽しさを知りました。そんな楽しさを教えられるような先生になりたいので、今回はいい経験になりました。

●熊本県美術家連盟の堀晋吾会長:近年中学校では集中して絵を仕上げたり、本格的に絵を描いたりする時間や機会がなかなかないといいます。スケッチ大会も小学生対象のものはありますが、中学生向けはほとんどないので、とても意義のある大会だったと思います。この大会をきっかけに、少しでも美術に関心がある人が育ってくれたらうれしいですね。今後も、この大会を盛り上げるお手伝いができればと思っています。